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映画、ときどきその他の鑑賞ログ

ミスティック リバー

  ジミー、ショーン、そしてデイブは近所に住む仲の良い3人組。ある日、道路でまだ固まっていないコンクリートにいたずら書きをしていた所、警察を名乗る怪しい男にデイブだけが連れ去られてしまう。監禁され暴行を受けその4日めに命からがらやっと脱出した彼。それから25年の歳月が流れ同じ町に住みながらもなんとなく疎遠なまま3人はそれぞれの生活を営んでいた。そんなある時、ジミーの娘が何者かによって殺害される。事件を担当する刑事はショーン。そして殺された娘の最後の目撃者として尋問を受けたのはデイブ。3人は思わぬところで再会を果たす事となる。


 事前にさまざまな賛否両論の意見を拝見したので(といいつつどちらかといえば否定的なほうが多かったような気がしますが)かなり期待してみました。ネタばれしてますので未見のかたは御注意を。


 愛娘を殺害された悲しみと怒りの余り勢いあまって幼なじみであり自分の身内(女房のいとこのだんな)を手にかけて復讐を果たしたようにみえたジミー、そしてそれが過ちだったと分かった時に彼のした事を詭弁で隠ぺいせざるをえない嫁。ジミーのした事は当然全く許される事ではないしそれは本人も分かっているけれど、そんな夫に対して嫁が言える言葉といったら良し悪しは別にしてやっぱりあれしかないような気がします。そうでないと彼らの築いた小さな幸せは粉々に消し飛んでしまうわけだし。それがたとえひとりよがりであろうと人ってそんなものであり、だからこそ原罪なのではないのかと。それが象徴的に登場する黒い十字架なのかもしれません。恐いですね。たとえ目には見えなくともショーンにも、デイブをジミーに売り渡した嫁セレステもそれを背負い込む事になる。十字架を恐れる吸血鬼の映画を見て、錯乱していくデイブはやっぱカナしすぎました。幼い時の事件といいデイブは運に見放されていただけにしてもその人生はあまりに悲惨だと思うけれど、ただ偶然とはいえ事件の日に血まみれになってうわ言のようにころころ変わる話をすれば妻だって不信感はつのるだろうし(かといってチクる相手は違うだろ、と思うけどね)。それでも彼女がパレードの人込みをかき分け走る場面は森の中を駈ける少年時代のデイブにシンクロして見えました。

 十字架といえばこんな事を連想したら不謹慎かも知れないけど、グランドゼロの現場にも大きな十字架立ってるのですよね。犠牲になった方々に罪はないし偶然その場に居合わせたことが不幸だったとしかいえないし、そんな人たちの命を奪ったものへの怒りは部外者の私でさえ強く感じてしまうわけですが。
 「私達は強い。生きていかなければならない。あなたのした事はすべて正当な理由がある。娘たちだっていつかそのことを分かってくれる」。そんなロ−ラ・リニ−扮する嫁アナベルの言葉に続く星条旗の揺れる町中でのパレード、それを眺めるジミー夫婦の映像は911以降のアメリカの風刺に見えました。後味は決してよくないので肯定的にとる方はあんまりいないと思うけど物語を単なる不条理としてしょうがないと思うのか、パレード中ショーンがジミーへ送る仕種からその後おこるであろう事を考えるのは私達次第のような気がします。そういった観客への問いがあったからこそ昨年のカンヌ映画祭のコンペ参加も意味があるような気がするし、イーストウッドが政治的にどちらの立場であるかはともかくショーン・ペンティム・ロビンスも出演したのではないのかな。
 アカデミー賞はどうなんだろう。この映画が受賞するような事があったらある意味画期的かも知れないし、もしかしたら失望するかも知れないし、いずれにしても何を持って受賞するのかその理由はかなり興味深いものがあります。

 謎解き/犯人捜しのミステリーとしてはわりとなんてことなかったような気がするのですが、とにかく主要なキャストの芝居は見ごたえがありました。原作を読んでからもう1度みたいです。でも「もうひとつのスタンド・バイ・ミー」ってコピーはないだろ、と私も思いました。よくこんなコピーが本国に通ったよね(っていいすぎ?)。イーストウッドは知ってるのかなぁ。(@名劇/盛岡)

原題:Mystic River  監督:クリント・イーストウッド
出演:ショーン・ペンティム・ロビンスケヴィン・ベーコンマーシャ・ゲイ・ハーデン