トム・ティクヴァの実験的な長編デビュー作。渇いたタッチのスリラー、マリア伝、精神妄想映像、家族の愛憎ドラマ、ちょっとした恋、ちょっとしたコミカルなどなどそれまでやってみたかったことがいっぱい詰まってるんだろうな、というのを感じました。ほとんどてんこ盛り。ある意味無法地帯というかまとまりに欠ける部分はないわけじゃないのだけれど、それでも作り込み方に目がはなせませんでした。ムシムシもあったけども。
何となく初期の頃のカウリスマキとか思い出すようなシンプルなマリアの家の朝の食卓。時計のちくたく時を刻む音にイメージはpunktlichなんだけどかつ倦怠。きっとこの夫婦はこうやって毎日同じ時間通りのなんの変哲もない生活を何年も続けてきたんだろうなという、同じ場面が断続して過去まで続いているような。だけどそこにカビ臭い匂いは感じられなくて、きちんとソーサー付きで差し出されるコーヒーカップのセットが妙にかわいかったり。
家の中に押し込められて屈折した生活をしてきたマリアではあるけれど、今じゃ寝たきりのお父さんも、男でひとつで生まれ落ちた瞬間から彼女をそれなりの深い愛でもって育ててきたのだろうし、ゆえにお父さんの最後はちと悲しかったけれど、物語の最後は不思議なハッピーエンド。昔からメルヘン路線?
原題:Die Todliche Maria (Deadly Maria) 監督:トム・ティクヴァ 1993製作
出演:ニナ・ペトリ、カーチャ・シュトゥット、ヨーゼフ・ビアビヒラー、ペーター・フランケ、ヨアヒム・クロール
@シアターイメージフォーラム 4.18鑑賞