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アズールとアスマール

 アズールとアスマールは乳兄弟。時にはとっくみあいのケンカもすけれど、乳母のジェナヌの歌ってくれる妖精の子守歌を聴きながら、白人とアラブ人と肌の色も身分も違っても困った時には助け合ったり慰め合ったりしながら本当の兄弟のように育った。でもアズールが大きくなると父親は彼を領主に相応しい教育を受けさせるべく寄宿学校に入れ、ジェナヌとその息子アスマールを屋敷から身ひとつで追い払ってしまう。

 やがて美しい青年に成長したアズールはジェナヌの歌ってくれた妖精の子守歌が忘れられず、妖精を捜す旅に出ようと再び海を越えたアラブの土地に渡ろうとするのだけれど船が難破し見知らぬ土地に流れ着く。そこで目にしたのは荒れ野や彼のよく分からない言葉を話す不虞の人々でアズールの青い瞳を「不吉」だと恐れて石を投げる人々だった。そんな醜い世界はみないほうがマシだと彼は盲人のフリをする決意をし、やがてめぐりあったクラプーという男に案内されて街へ向かう。

キリクと魔女』『プリンス&プリンセス』のM・オスロ監督の最新作。

 同じ乳を飲んで育った異民族の二人。時々相手のおやつの方が大きい!とか、母さんは僕のだ!と小さな言い合いやら張り合ったりすることはあっても、そこには何の偏見も憎しみもない。なのにアズールの父親みたいな大人に人としての心や恩義もないがしろに傷つけられることで相手に対する不信や憎しみが芽生える。

 青年となったアズールは再びアフリカに渡るけれど難破して漂着した先の土地で見知らぬ者への恐怖や、真偽のほども確かめられずに盲信されてきた迷信のために初めて差別される側にまわり、そんな自分を受け入れない醜い状況なぞこっちからお断りだと目をつぶってしまう。

 おとぎ話というと古典的なイメージがあるけれど、ここで語られる事柄は今の世だからこそ改めて語られて、考えたり目を開くべきこと。肌の色が違う美しい二人の妖精とアズールにアスマール、イスラム教徒のおしゃまなお姫様にユダヤ教のラビ、裕福になった乳母と物乞いのクラプーが手に手を取って踊る場面。美しい美しい映像の中にちりばめられた教訓は小さな子どもから大人まで誰もの心に永く留まることでしょう。ガブリエル・ヤレドの音楽もよかった。

原題:AZUR ET ASMAR  監督:ミッシェル・オスロ
2006年製作 フランス映画(アニメーション)
声の出演:シリル・ムラリ、カリム・ムリバ、ヒアム・アッバス
(吹替版):浅野雅博、森岡弘一郎、香川照之
日本語版翻訳演出/監修:高畑勲