NHK BSの世界のドキュメンタリーでも短縮版が放映されていたけれど、かつて東独時代に世界有数の生産量を誇り1990年代に閉鎖されたウラン鉱で排出され今現在も放射能を発したままの大量の堆積物処理に取り組んでいるドイツ・ヴィスムート社の事例を中心に、知られざる世界各地のウラン採掘現場の事情を垣間見ることができる作品です。
外資を取り込んで国の若い男女雇用対策の一翼を担っていると自負しているアフリカ・ナミビアのとある会社。かつて冷戦時代には新興のウラン鉱の町として栄えたものの資源の枯渇と共に住民も去り、それでも新しい鉱脈を学生を動員して探したり、またかつての採掘場の跡を活用できるようにならないかと模索し続けるカナダ・ウラニウムシティの住民たち。豊かな自然の中に眠る莫大なウラン採掘に向けて画策する企業と、それを拒み続ける土地の所有者たるオーストラリアのアボリジニの人々とその支援団体。
それらを見ていて思うのは、いつの時代も企業の側は金のことしか考えず口八丁でおいしいことばかり言って、現地の人にとってどうなのかと本当のことは言わないもんなのだなということ。産業を発展させるために強力なエネルギーが必要で、原子力ならエコだクリーンだ作るほうも使うほうもいいことずくめだーなんていうのがとんでもない嘘っぱちで、一旦暴走してしまったならどれだけ取り返しがつかないことになるか誰にも見当もつかないなんてことは、2011年3月11日以降を体験しているわたしたちにはイヤという程身にしみて分かっている。それなのに知らん顔して原発再稼働だ、挙げ句の果てには海外に売りつけるだとかいうような厚かましいことを平気でやろうとするこの国の政治家は、本当にどうかしてるとしか思えないのだけど。犠牲になるのはいつのどこの世界だって経済的な弱者。金は払うんだから文句は言わせないなんて高飛車は言いぐさは、もうこの時代通用するわけがないし絶対通してはいけないんだよ。
と、あれこれ考えていると話も映画からあちこち脱線してしまうのだけど、ウランって放射性物質ってどんなものなのか、いまだ続いているこの国のかの地の人々の苦悩を忘れてしまった/忘れかけているならば観ておいたほうがいいドキュメンタリーのひとつ。目の前に置かれた情報も、目を閉じて耳をふさいでしまってはわからないのだから。
原題:Yellow Cake 監督:ヨアヒム・チルナー(ドキュメンタリー)
2005年~2010年 ドイツ 108分
未来のエネルギー 映画特集とパネルディスカッション@東京ドイツ文化センター(2011年10.05〜08)
2012年劇場公開