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カルロス

  1970年代より94年に逮捕されるまでテロ活動を行っていた現在も服役中のベネズエラ出身のテロリスト、“カルロス”ことイリイチ・ラミレス・サンチェスの半生を描いた作品。元々はテレビシリーズ映画だったとのこと。これがあのアサイヤスの作と聞いたときにはかなり驚いたものだったけれど、3パート約5時間半にもわたる長丁場をみじんにも感じさせないスリリングな語り口。第1部の日本赤軍によるハーグ・フランス大使館襲撃事件、パリ・トゥーリエ街の警官殺害事件、そして第2部のOPEC本部襲撃事件などの圧倒的な迫力に続く、第3部のもの悲しさすら感じる逮捕までの流浪の日々のドラマにぐいぐい見せられます。

 描かれる事件に関しては多少ニュースで読んだことがあったかもしれないけれど、カルロスのことはよく知らなかったんですが、大儀のためと言いつつも人殺しなわけだから同情は一切無用なのだけどカリスマ性溢れる非常に魅力的なキャラクターに描かれています。本物の写真見る限りはなんだか丸っこいおじいちゃんで、本当にこのじいちゃんがそんな大胆なことしてたんだろうかという感じなのだけど。

 カルロスの周辺にうごめく組織…パレスチナ解放人民戦線から、日本赤軍、ドイツ革命細胞、ソ連、東独のシュタージ、バスクETAリビアイラク、シリアの政府周りなどなど現代史の裏側がぞろぞろ出てくるので、いちいち公式サイトの人名相関図を確認しながらみていましたが、もうちょっとそのへんを頭に入れてから再見したいです。5時間半だけど、これなら絶対耐えられる自信あり(笑)。また、あとから調べたところによればエイダン・クインの『アサインメント』もこの“カルロス”をネタにした作品とのことなのでそちらもみてみたい。

 キャストは、主演のE・ラミレス筆頭にこれまたあまり観たことのない役者さんが大半だったけれど、当時の革命戦士というか時代を感じさせるいいキャストだったと思います。別な作品で記憶に残ってる2人、ドイツの少女テロリスト“ナーダ”を演じたユリア・フンマーはクリスティアン・ペツォルトの『幻影』やもう1本『クレイジー』なんかで寡黙な雰囲気のある少女を演じていたのをよく覚えているけれどここでのブチ切れぶりにはビックリだったし、3部でハンガリーの2人の政府当局者のうちのひとりは『メイド・イン・ハンガリー』のゆかいなビガリ同志ことペーテル・シェーラーで、ここでも役人なのねーなんて思って見てました。あと、赤軍のハーグ事件を引き起こした、フランス税関で捕まるメンバーを演じた日本人の彼のただ者じゃない感じが印象的だった。

 しかし、なによりの驚きはアサイヤスこんな作品も撮れるんだなーということで、今まで『クリーン』ぐらいしか好きでなくてゴメンという感じ。…これを機にアメリカから変なアクション映画のオファーが来ないといいっすね。

原題:Carlos le Film 監督:オリヴィエ・アサイヤス 2010年製作
出演:エドガー・ラミレス、ノラ・フォン・ヴァルトシュテッテン、アレクサンダー・シェアー