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映画、ときどきその他の鑑賞ログ

リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス

 数年前ビルボードライブへ出かけた時、会場アンケートで「呼んでほしいアーティスト」の項目があって迷わずリンダの名前を書き込んだのだけれど、その後帰宅して調べたら彼女がパーキンソン病を患っていてその時はすでに歌手の活動を引退していたことを知ってとても悲しくなったものだった。だって、自分にとってリンダとスティーヴィー・ニックスは大好きな憧れの2大女性ヴォーカリストだったから。
 本編は生い立ちが語られる冒頭で発明家だった祖父は稼いだお金をすべてパーキンソン病を煩う自分の妻=リンダの祖母のために遣っていた、と話されて始まる。

 幼い時から家族の中で兄姉と歌を楽しんでいたリンダはどうしてもプロになりたくて一人ロスに向かった。そしてストーンポニーズというトリオで本格的な活動を始め、その歌唱力を買われてソロデビューして以来、60年代後半から2000年代に入ったころまでの活動期間、70年代にはウエストコーストサウンドの歌姫として確固たる地位を築き、そしてその後にはブロードウェイミュージカルやスタンダード曲、カントリーミュージックスペイン語の楽曲など様々なジャンルの楽曲に挑戦し都度成功を収めてきた。そんな彼女の半生が、彼女と深く関わったミュージシャン仲間や長年プロデューサー/マネージャーを務めたピーター・アッシャーなどの証言をもとに振り返られる。
 あんなに圧倒的にうまいのに本人はいつも自分に自信がなくてファンや周囲の反応を気にしていたと何人かが話していたけれど、70年代の大成功を経て次々と多様なジャンルに挑戦する時には人一倍の努力を注いで臨み、政治家と恋愛関係にあれば政治の勉強も欠かさないなどリンダはほとんど完璧主義者といっても過言ではなかったのだろう。加えてきっと根がまっすぐで真面目な人なんだろうなと思う。男性ミュージシャンたちが多い世界で注目が集まれば、あることないこと事実以上に書き立てられることもあったろうけれど(実際邦盤レコードライナーにも「恋多き女」の文字が必ずといっていいほどあった)恋愛というより相手が異性というだけの仲間意識で渡り合ってきたさばけた素直な子だったんじゃないかとインタビューを見て思う。
 最後、現在のリンダがかつてのように身内のトリオでハーモニーを聞かせる場面は切くもあったけど、きっと彼女なりに今も音楽を楽しめるような穏やかで幸せな暮らしを送っているのだろうし、そうあってほしい。
 そしてロックの殿堂の記念式典のトリビュートで、キャリー・アンダーウッド、シェリル・クロウ、そしてリンダの戦友とも言うべきボニー・レイットやエミルー・ハリスと一緒にスティーヴィーがリンダの曲を披露した場面にはマジ泣きしてしまった。二人の共演観たかったけど、でもそんな様子を見られるだけでもちょっと夢みたいで。


原題:Linda Ronstadt : The Sound of my Voice
監督:ロブ・エプスタイン、ジェフリー・フリードマン 2019年製作
(ドキュメンタリー)
@ヒューマントラストシネマ渋谷