レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジを初めて目にしたその日から「自分はペイジになるんだ」と決心して邁進し、現在も進化を続けるジミー桜井こと桜井昭夫さんの、ほとんど「ペイジ道」といってよい道を模索するさまを記録したドキュメンタリー。
自分の知り合いにもツェッペリンのコピーバンドやトリビュートバンドでジミー・ペイジになりきっているギター弾きは何人もいたけれど、桜井さんのそれはそんじょそこらの「コピー」や「トリビュート」などを遥かに超えている。彼は「ジミー・ペイジになること」を目標としてやっている人なので、そのこだわりに一切の妥協はない。楽器や衣装、プレイテクニックどころか、インプロビゼーションてんこ盛りといわれるツェッペリン各時代のライブステージを、その呼吸に至るまでほぼ完全に再現し、ペイジさんのレガシー伝道師として後世に伝えることを自らの使命としているといっても過言ではない。なにしろ桜井さんの演奏を見にライブハウスを訪れたペイジさん本人の後ろからの映像が、ほとんどシンクロ状態で桜井さんの演奏に吸い付くように見入っているのだから、もう本人お墨付きどころのレベルじゃ済まないことは明白だろう。
ご家族やステージ衣装や機材調整などなど様々な協力者の手を借り、ペイジ本人にも認められ、普通ならここで「めでたし」と終わってもよさそうなものだけど、そこから桜井さんの第2章、アメリカ挑戦記が始まる。彼の地でトリビュートバンドがライブ活動で生計を立てられるのも感心するけれど、大抵のそんなミュージシャンにとってそれはあくまでも観客を喜ばせて稼ぐための「音楽ビジネス」であり、当然「道」とは相容れない。「何年何月のどこそこのステージを再現しよう」と持ちかける桜井さんに、最初のうちは「この人、すごっ」と尊敬の目を向けるメンバーも、彼から自分と同じだけの完ぺきやら熱量をもっともっとと求められればやがて「ちょっと勘弁してよ」になっちゃうのも無理はない。そして舞台演出に至るまで徹底した再現ライブ・来日公演が成功裏に終わっても、桜井さんは結果的にバンドを離れることになってしまう。傍目には狂気としか映らない徹底した彼の姿勢に、意見というより気構えの相違からバンドとの別れを繰り返すけれど、それでもブレない桜井さんはすごいと思う。求道者として当然のことと御本人はいうかもしれないけれど。そんな彼の覚悟をもった活動がジェイソン・ボーナムの耳に届いて、本当にツェッペリンの遺伝子を受け継いだバンドに参加することになるのだから、もういうことないんじゃなかろうかとも思うのだけど、そんなジェイソンにも「今のところはこうだったよ」とか指導を入れちゃってる桜井さんがやっぱりお茶目でクスっと笑える。
誰かそのものになりたいという願望の実現は物理的には当然不可能なのだけど、それでも限りなく近づくことは可能なのだ。ギャップをちょっとずつでもどれだけ詰められたかという部分で桜井さんは常日頃たゆまぬ努力を継続している。そんな姿をなんだか眩しくも、羨ましくも思いながら見ていた。
そして桜井さんの映像をネットで偶然見つけて撮影のオファーを出したという、監督自身も「何年何月のどこそこのステージ」にちゃんと反応できるそうだから相当コアな人だと思うのだけど、そんな二人が出会って信頼関係を築きこうして記録が残せたのはとても幸福なことだったろう。
そうそう、桜井さんのバンドに元クワイエット・ライオットのフランキー・バネリが参加していたのは驚いた。あと監督のコメントでツェッペリンの楽曲の使用許可をとるのが難題でとパンフにあったけれど、あんなにたくさんの曲の使用によくOKがでたなあとは思った。そこは本当にジェイソンとペイジさんお墨付きの効果なのかな。
原題:Mr. Jimmy 監督:ピーター・マイケル・ダウド 2023年製作
(ドキュメンタリー)
2025/1/16 鑑賞 @シネマカリテ
