時は7月ヴァカンスの真っ盛り。運命の太陽を求めてハンブルクからイスタンブールへと旅立つ、ちょっとイケてない物理教師インターン ダニエル君の恋のハッピー・ロード・ムービー(笑)。
『愛より強く(Gegen die Wand)』がよーやっと日本でも公開された、恐るべしファティ・アキン2000年製作の作品。
ファティ・アキンは一昨年のベルリン映画祭で名前を聞いて以来 気になっていた監督。同年アテネ・フランセで開催になった「トルコ=ドイツ映画の作家たち」で上映された97年製作の短編『雑草(Getuerkt/Weed)』と、両親の故郷を訪ねるドキュメンタリー『ドイツを想う:私たちは戻ることを忘れてしまった(Wir haben Vergessen zurueckzukehren/I Think About Germany: We Forgot To Go Back)』2000製作をみて、長編フィーチャーを観るのをとっても楽しみにしていたのだけれど、去年のドイツ映画祭でその『愛より強く』を見そびれて以来、念願の鑑賞。今回『愛より強く』と同時公開された旧作がこの『太陽に恋して』だったので、じゃ順番でこっちから、と観たわけです。
川下りの運搬船に潜り込んでハッパなのかロープなのかようわからないタバコを吹かしてハイになる主人公ダニエルとユーリ。ほんわか宙に浮かびながら川を下るその風景ってばまるでベッドで空飛ぶクストリッツァの映像か、はたまた夜空に浮かぶお月さんの顔はスマッシング・パンプキンズ「Tonight,Tonight」のPVかー。
ちょっと突飛なファンタジー映像。さえないダニエルが火事場のバカちからでヒーローと化したり、きれいで凶暴だけどやっぱしかわいいトラック野郎ねーちゃん。強面の兄さん・おっさんのコミカル場面。アクションのテンポの良さに、異国をドライブする言語不通&カルチャーギャップのおかしみとロードムービーの気持ちよさ。&運命の恋のロマンチック加減。そんないーっぱいの要素が詰まりに詰まったファティの作品はどことなく既述通りクストリッツァ作品の雰囲気に似てるかも。でもあそこまでもってるユーモアが切なくても自虐的…じゃちょっと言葉が強いかもしれないけど、痛みの深さが深すぎず悲しすぎないのは、西側ドイツで生まれ育ったトルコ人であるファティの程良くウエスタナイズされている一面によるものか。似たような異邦人のかほりは感じるけれど多アイデンティティが実際 後天的に国を失ったことで発生したクストリッツァとの違いもあるのかもしれないし。
バランスよし、イカシテる具合よし、勢いノリノリも純粋に楽しかったです。期待通りの初めての長編フィーチャー版ファティ体験でした。『愛より強く』鑑賞がますます楽しみ。
出てくるキャラはみんな魅力的なんですけれども(ルーマニアの怪しい国境警備員に扮したファティ本人然り!)、今から6年も前の作品だから多少ピチピチしてるとはいえ、基本的には現状とあんまし変わらないつるんとした顔にタラコ唇がトレードマークのブライプトロイくんが、これだけはじけて、かわいくって、魅力的に映っていた作品を観たのは初めてかもー。
とりあえず見終わった後にめっちゃ旅に出たくなりました。
原題:Im Juli 監督:ファティ・アキン 2000年製作
出演:モーリッツ・ブライプトロイ、クリスティアーネ・パウル、マフメット・クルトゥルス
@シアターN渋谷