エルマンノ・オルミ、アッバス・キアロスタミ&ケン・ローチがつづるインスブルックからローマへと向かう列車の中で起こる三者三様の物語。どのストーリーがどの監督か、というのは非常にわかりやすかったというか。それぞれの登場人物の描き方も興味深かったです。
※オルミ・パート
仕事一辺倒でまわりのことなど見えていなかったのかも知れないの初老の男のハートに灯ったかつての初恋を思い起こさせる温かいともしび。出張の合間に起きた飛行機の遅れというほんの偶然で誰かを頼らざるを得ない状況が引き起こした思いこみなのかも知れないけれど、そんな思いこみこそは彼が顧みたくてもできずに心の奥底に封印されそのまま忘れられていた甘い想いなのかも。きっと堅苦しい会議の報告書ならいくらでも筆が進むのだろうに、自分の心の奥底の本当に伝えたいことを言葉に表せないもどかしさと入り口を隔てたアルバニア人一家への関心。最後の贈り物にほろり。バレリア・ブルーニ=テデスキもステキでした。
※キアロスタミ・パート
ここしばらく彼の映画は観てなかったんですがその洗練ぶり、というかヨーロッパの監督さんのような作品にちょっと驚いたかも。3人の中ではちと辛辣だったかも知れないけれどそれもまた新鮮な驚きが。他人を構わず自己主張するだけのおばちゃんにああーこういうおばちゃんって絶対いそうと思いつつも時折外に向けられる彼女の視線にどこか寂しげだったり複雑なものを感じたりするのは、自分もああやってわがまま言えるもんなら言ってみたいとか、何となく頭っからヤなおばちゃんってことを心情的にかばってあげたいだけなのか。そういやあのおばちゃん一度もごめんって言わなかったような。普通の流れならどこかでひと言言わせそうな気もするけども。人生は思い通りに行かないってことを描いた作品とのことですが、あのおばちゃんならあそこで駅に座り込んでもたくましくやっていきそうな気もするし、はたまたしおらしくなってほしい気もするしちょっと複雑な余韻が残りました。
どっちかといえば分からなかったのはフィリッポの気持ちのほうかも。女は年とっても若くても扱いにくいとか、あんなおばちゃんから逃げ出す気持ちは分かるけど、兵役を逃れて小間使いしているその動機やら、何で途中で逃げ出さなかったのかはちょっと分かんなかった。とはいえそこが他人に流されてばかりいたようにも見えなかったんだけども。やっぱ自分がおばちゃんに近いからですかね?
※ケン・パート
やー、いいですねー。こういうあんちゃんもののお話しはめっちゃ大好きです。セルティック・サポは世界一ハートが温かいんですよーよかったねシュンスケ(笑) ばりばりスコットランド訛りのあんちゃんたちの言葉がやっぱしほとんど聞き取れないことにあきらめつつも半分ショックを受けながら、ユーモアと嫌味のかけらもない最後の男気にほろり。やっぱ純朴クンに悪いヤツはいないんだ。ローマの駅に着いて脱走する3人組をなにげにサポートするティフォージもさすが。切符をなくしたあんちゃんは『Sweet sixteen』の子? とにかくいうことなし。
原題:TICKETS 2005年製作
監督:エルマンノ・オルミ、アッバス・キアロスタミ、ケン・ローチ