cineLog

映画、ときどきその他の鑑賞ログ

十艘のカヌー

  オーストラリア映画祭上映作品『バッド・ボーイ・バビー』『アレクサンドラの企て』のロルフ・ドゥ・ヒーア監督の最新作。今回の上映は英語ナレーション、本編アボリジニ語のバージョンでしたが、両方ともアボリジニ語のバージョンもあるのだそうです。アボリジニってたしか文字を持たない言語ときいたことが。…撮影大変そう。

 お話しはオーストラリアの沼地にすむアボリジニに伝わる伝承物風。一夫多妻のアボリジニの生活の中で兄の最も若い嫁に横恋慕してしまった弟にカヌー作りから始まってカモ狩りに向かう途中、兄が語る祖先の物語。

 かつて3人の妻を持っていたダインディという男の2番目の妻が突然いなくなり、村の男たちはきっと他の妻へのあてつけで逃げ出したか、川の部落の男たちにさらわれたのだろうとウワサする。でもダインディは妻をさらったのはその少し前に突然現れた、言葉も通じなければ怪しげな呪術を使うよその部族の男の仕業に違いないと信じて疑わなかった。やがて村を訪ねてきた叔父から道中、彼の妻が見知らぬ部族の男たちと一緒にいたという話を聞いてダインディは自分の勘は正しかったとばかりに村の男たちと妻を取り返しに向かうが、妻は見つからない。憎しみと嫉妬に駆られた彼は思いあまってその部族の若者を殺してしまう。しかし妻が彼らと一緒にいたというのは単なる叔父の見間違いで、罪もない若者を殺してしまったことでダインディは逆に彼らの報復を受けることになる。

 オーストラリアの大自然で繰り広げられる土着的な匂いを感じさせる女を巡る男たちの攻防。民話のほのぼのさにブラック系ユーモアのスパイスで加えたちょっと風変わりなテイストが広がります。ナレーションの語り口も絶妙。物語の荘厳な山場とそのあとのちょっと予想を裏切るちっちゃなオチとのギャップにクスっと笑いが。ストーリーの中に登場する2世代のモノクロとカラーのカメラワークの切り替えも絶妙。お気に入りの1作。

原題:Ten Canoes 監督:ロルフ・ドゥ・ヒーア/ピーター・ジギル 2006年製作
出演:ジェイミー・ガルピリル(ナレーション)
2006年日豪交流年オーストラリア映画祭にて
2006.10.03~10.29 @東京国立近代美術館フィルムセンター